「棚卸しはやらないです。」と言うのは言い過ぎで、棚卸しをするのは年に1回だけで十分だと思っています。
それは事業の決算月12月(個人事業主の場合)です。
毎日とか毎週とか、毎月とか、ありえないです。
そんなことに無駄な時間を使うより、スポーツジムに行って汗を流したほうがよっぽどましです。
棚卸しとは?わかりやすく
「今日は棚卸しのために残業なんだ。」なんて話はよく聞きます。
でも、当の本人は棚卸しの意味を知らないことが多いですね。
実際、「棚卸しってなに?」って聞かれたことがあって、説明するのにしばらく考えました。
一見、「棚から卸す」なので商品を棚から下ろすだけのシンプルな話に思えます。
でも、正確には帳簿の数字を確認するための作業です。
具体的に言うと、帳簿上の在庫数と現場の在庫数が合っているかどうかをチェックする作業です。
実店舗だと「万引」や「従業員の窃盗」などで「帳簿上には10個あるのに現実には8個しかなかった。」ということが起こります。
棚卸しは犯人を発見するための作業ではなく、単に帳簿上の数字を調整するだけの作業です。
利益にならない仕事は減らす
大企業の部署で「棚卸部」があるなら、棚卸が本業ですからしっかりやる必要があります。
でも、自分のビジネスをやっている人にとって、帳簿だの会計だのは、単なる記録です。
経営上やらなければいけないことですが、それに、いくら時間をかけても売り上げも利益も増えません。
「利益にならない雑用は極力減らす。」というのが基本ですね。
そうは言っても、1年に1回はやらなきゃいけないので、基本だけは押さえておきましょう。
棚卸しの目的は、数字と現実の商品の数がちゃんと連動しているのか確認すること。
ネット販売の場合、「万引き」など「なぜか在庫がなくなっている。」ということもあり得ないので楽です。
ちょー簡単棚卸術
棚卸しによってわかるのは、「在庫をどれだけ仕入れて、結果どれだけ残っているか。」ということです。
例えば、Tシャツ1アイテムだけ販売しているケースで例で見てみましょう。
仕入れた数(個人事業主の事業年度)
月 | 数量 |
1月 | 10枚 |
2月 | 10枚 |
3月 | 10枚 |
4月 | 10枚 |
5月 | 10枚 |
6月 | 10枚 |
7月 | 10枚 |
8月 | 10枚 |
9月 | 10枚 |
10月 | 10枚 |
11月 | 10枚 |
12月 | 10枚 |
あえて毎月10枚にしたので、1年間に120枚仕入れたことになります。
10×12=120
そこで、12月の決算月に1回だけ、「何枚残ってるのか」を数えます。
数えたところ5枚残っていた。すると、年間通じて115枚が売れたことがわかります。
120-5=115
小学生の算数の問題ですね。
これを簿記に変換すると、次のようになります。
期首棚卸在庫:10(実際は金額)
期末棚卸在庫:5(実際は金額)
毎月、仕入れたときの仕入額の記帳はしているはずなので、「1年間の仕入額」と「115枚×仕入れ金額」はぴったり一致する事になります。
これをずれないようにするために行うのが棚卸しです。
「いくら商品を仕入れて、いくら残っている」というのを、全てバーコードでピピっとやっている場合は、人がいちいち数えなくても、コンピューターの数字を見れば良いわけです。
ただ、コンピュータ化されているのは資本力のある企業だけなので、小さなネットショップや小規模な商店は、相変わらず人力です。
日々の記帳こそ命
今回の例では、Tシャツ1アイテムとしたのでミスが発生する可能性は0%に近いでしょう。
でも、実際の現場では何十アイテムから何百アイテム。
SKUなどのバリエーションの展開などで管理する数も増えちゃいます。
さらに、「出荷したけど返品された。」とか、「1個注文のところ2個出荷してしまったがお客様からの連絡なし。」「注文品と違うものを送ったがお客様から特に報告はなし。」「交換した。」など、どうしても在庫数のズレが発生します。
返品など、在庫に動きがあった場合は、必ずその時に帳簿に記録するのが鉄則です。
そうしないと、期末にバカみたいな時間がかかってしまうわけです。
領収書やレシートなど、普通の経費は、確定申告前などにまとめて入力しても、さほど問題にはなりませんが、在庫、つまり仕入れは普通の経費とは違いますから日々の心がけが重要になってきますね。
返品の仕訳
ついでに、仕訳。
返品の時の勘定科目は、売上げ戻りです。
(例)5,000円のTシャツ1枚が売れたが1週間後未開封で返品された。
5月10日 銀行口座 5,000円 | 売上高 5,000円
5月17日 売上戻り 5,000円 | 銀行口座 5,000円
「売上げ戻り」は先の売上高を相殺するための科目という感じですね。
相殺なら「売上高」でも良さそうそうです。もちろん、売上高でも帳簿上は問題ないのですが「返品の記録が残らない」というデメリットがあります。
「売上戻り」を使うことで、決算時に、毎月、あるいは、年間を通じて、どの程度の返品があったのかがわかります。
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経費は一行一行入力しないといけないのか?
今回の手抜き棚卸と共通する話です。
「毎日のように発生する経費を会計ソフトに一行一行入力しないといけないのか?」という質問を受けることがあります。
上記に書いたように、事業者は「利益を最大化する」のが仕事です。
それに直接関連しない仕事は極力しないのが鉄則です。
だから、経費の仕訳をいちいち、一行ずつ入力する仕事は100%無駄な仕事ということがわかると思います。
その科目がなんであれ経費は経費ですから、手を抜きましょう。
1カ月の消耗品購入の回数が20回あった場合、月末に1行で入力すればOKです。
手間が20分の1になりますよね。未だに、まじめに20行やっている人もいますがお金をドブに捨てる行為ですね。
まとめて入力しても、一行一行入力しても金額も意味も同じです。脱税でもなんでもありません。
また、税務署に指摘されるようなNG行為でもありません。
どこの会社でも当たり前にやっていることですので、安心して手を抜きましょう。