人の口に入るモノを販売する場合は、ほぼ例外なく許可が必要です。命に関わりますからね。
最近多いのが、この「レンタルキッチンやシェアキッチンという言葉と「菓子製造許可」という言葉の組み合わせ。
シェアハウスやシェアレストランなどもブームになりつつありますが、レンタルキッチンも、ある意味、シェアエコノミーのひとつと考えられます。
「レンタルキッチンを使って焼き菓子等を製造販売することはできるのか。」
素朴な疑問への回答。
レンタルキッチンで作った焼き菓子をネット販売したい
お菓子作りが好きな人って多いですよね。
コロナ騒ぎ以降始めた人も多いですね。
でも、「自宅で作ったクッキーやースコーンをそのままネット販売しても良いのかしら?」普通ならそんな疑問を持つかと思います。
お察しの通り、家庭用のキッチンで作った食品をネット販売はもちろん、店舗販売するのも禁止されています。
ちゃんと設備を用意して保健所の許可を得ないと販売できないのです。
法律的には、そのように決まってはいます。
しかし、毒があり調理に免許の必要なフグや食中毒のヒット率が高い生牡蠣生を販売するのとは違います。
現実問題、「お隣の奥さんが手作りしたパンやクッキーを仲間内で配っている、販売している。」なんて話は、日本全国津々浦々いくらでもあります。
それを一律「食品を販売する場合は許可を」というのも、お役所的でどうかなとは思いますけどね。
まあ、そんなことは言っても法律は法律ですから「何かあった」ときのためにも、やはり正規の手続きは必要でしょう。
保健所情報はどうなっている?
保険所情報をさくっと見てみると、「レンタルキッチンで製造する場合は・・・」といった規定も見当たらないので調べてみました。
まず、「菓子製造業の施設基準」という言葉があったので読んでみると、次のように書かれています。
食品の安全確保上問題がなければ、施設や設備の一部省略、または、他の食品営 業許可施設等との施設設備の共用が認められます。 詳しくは保健所に御相談ください。
○ 施設や設備の一部省略の例 ・ 小規模な菓子製造業者が、製造後、直ちに製品を店舗内の販売用陳列ケース に収納する場合は、製造室内の製品保管庫は省略が可能です。
○ 施設設備の共用の例 ・ 菓子製造業と調理パンを製造する飲食店営業は、それぞれの営業施設の基準 に合致すれば共用が可能です。
http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-520/syokuhin/kyoninka/documents/103.pdf
「菓子製造は製造者本人が契約した施設でなければいけない。」という規定はないので、保健所の許可が下りているレンタルキッチンであれば問題ないのではないと解釈できます。
また、レンタルキッチンを運営している業者のホームページを見ると、「レンタルキッチンを使って菓子を製造して販売するのは違法」とは書かれておらず、「インターネットやフリーマーケットで販売することを目的としたご利用はお断り。」といった運営者の利用規約のようなものが見られます。
以上の2点だけを判断材料にするなら、レンタルキッチンを使って菓子製造をしてネット販売をしても法的には問題はなさそうです。
しかし・・・
おそらく、製造許可を持っている人や企業が、それを許可しないと、勝手に販売したりすると怒られたり出禁になったり。
結局のところ、販売者本人が許可をもっていないといけないということですね。
菓子製造許可付きレンタルキッチン増えているが・・・
菓子製造許可のついたレンタルキッチンが増えています。
1時間あたり1,000円~6,000円程度で、製造許可付きのキッチンを使えるようなサービスが各地で立ち上がっています。
例えば、駅近の住宅街に戸建てのレンタルキッチンなどがあれば、半日借り切ってお菓子や料理を提供してカフェ的なビジネスをすることも可能です。
ただ、それは、「その場所で」の話なんですよね。「そこで何かを作って通販する」となれば話は全く違ってきます。
というのも、ネット販売の場合、販売者の所在地を明示しないといけません。
週に1回利用しているレンタルキッチンの所在地を、「販売者の所在地」として公表できるかどうかはレンタルキッチン側の判断です。
おそらく、ほとんどの場合はNGでしょう。
なぜなら、通販で何かトラブルがあれば許可を持っているレンタルキッチン所有者の責任になってしまうからです。
要するに、許可だ免許だ、というのは、「何かあったときの責任の所在をどうするか」という部分にかかっています。
つまり、責任問題をクリアすれば、簡単に通販だろうが店舗だろうがやれる、ってことですね。
レンタルキッチン・ポータルに聞いてみた
以前、レンタルキッチンを仲介するサイトに、この件についてメールで聞いてみました。
「レンタルキッチンを使って菓子を製造し『ネット販売』しても良いか。」
具体的な返答ではなく、的を得ない回答でした。
メールは削除したのか見当たらず、返事は次のような感じだったかと思います。↓
「レンタルキッチンで作った食品の販売は可能です。ただし、食品衛生責任者の資格は個別にとっていただく必要があります。」
通販について一切触れておらず、コピペ回答なのか、担当者の知識がなかったのかわかりません。
手作りは必ず需要が
大手メーカーのお菓子には、いろいろ科学的な物質が添加されています。
アトピーを持つ親御さんや食品を気にする人にとって、メーカーの製造する工業製品はもはや選択外でしょう。
そんなとき頼りになるのが無添加の手作り食品。
手間暇かけて、愛情もかけて作った食品が売れないわけがない。
私の周りでも、すでに添加物の多い食品は極力取らない人も増えてきました。
身体に入れるものを気にする人が増えてきているので、「無添加」「手作り」「オーガニック」などのキーワードを持つ商品は、今後ますます需要の増えてくる分野です。
もし、安全な材料で、小さな子供から、あるいは、アレルギーを持っていることもからお年寄りまでが安心して食べられるお菓子や食品を作っているなら、ぜひ販売をしてもらいたいものです。
個人的にも、食には気を使っていて、「誰がどのようないきさつで、どのようなモノを使って、どのような気持ちで作っているか。」という点を、かならずチェックします。
無許可ネット販売はNG
ママ友など、お菓子作りが得意な人がいて、みんあで集まるたびに「自家製クッキー」や「手作りパン」など持ってきて配ってくれる人なんていますよね。
それは何ら問題なし。
でも、「ほ~んと。このパンおいしいわ~。なんで販売しないの?絶対売れるわよ。」なんてそそのかされて、自宅キッチンで作ったパンをメルカリで販売するとします。
ネット販売することには許可も認可もいりませんが、菓子やパンを作る場合は「菓子製造許可」という許可を得ないといけないので違反ということになります。
ただ、それをやったからと言って、すぐさま保健所の立ち入り検査を受けたり警察が踏み込んでくる、というようなことは、まずありません。
せいぜい、出品物を見たユーザーが「菓子製造の許可はありますか?」なんて質問してきて、「ないです。」と答えたら、違反通報されて出品禁止になる程度です。かといって、そういったリスキーなやり方はやらないほうが良いですね。
※例えば、メルカリでお菓子を販売する場合は、製造許可の許可証などを提出する必要があります。
無許可でやると、早かれ遅かれアカウント停止になるでしょう。
問題は「責任」の所在
さてさて、もし、菓子製造許可を持っていてお店をやっている友人が「営業時間外なら使ってもいいよ。」と言ってくれたならどうなるか。
ありがたいことかもしれませんが、この場合「何かあったときの責任の所在」を明確にしなければ、後々のトラブルになります。
「何かあったとき」というのは食中毒であったり、お客さんとの何等かのトラブルなどが考えられます。
万が一、食中毒を出してしまった(洋菓子は注意)場合、友人は「あなたが作ったものだから私には責任がない。」と言うかもしれませんし、「貸した私が悪いので、私が責任を負います。」と言うかもしれません。
もし、レンタルキッチン(友人に借りる場合)を利用する際、このような万が一のトラブルを事前に想定して、「責任の所在」を明確にしておくことが必要です。
口約束ではなく記録に残る文章で保管しておくのは絶対必要なことです。
シェアキッチンで焼き菓子店オープンの事例
たまたまテレビを見ていたらシェアキッチンで焼き菓子のお店を始めた人のニュースをやっていました。
ちょっと長くなったので、こちら(シェアキッチンでお菓子のお店オープン)に書いています。2021年4月22日
焼き菓子のネット販売5ステップ
販売の準備ができている人は、ネットショップを開設して販売開始。
SNSと相性の良い商品である焼き菓子をネット販売するステップの概要を紹介しています。
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