一度採用すると簡単に解雇することができないのが日本社会。
自分で採用したフタッフにクビを宣告するのも心理的に難しいものです。
採用が決まったなら1日も早く戦力になるようトレーニングに入りましょう。
今回は、これまで社員やパート、アルバイトを採用してきた経験からパートやアルバイトの使い方についてのポイントをまとめました。
これらのポイントを押さえておくと、おそらく、スタッフの扱いは「かなりうまくいくのではないか?」と自負しています。
スタッフのペースで学んでもらう
早く戦力になって欲しいがために短期間に詰め込もうとしても、そう簡単には身につくものではありません。
人間には限界がありますからね。
「人間の集中力の限界は90分」などと言われるよう(根拠はないですが)に、新人がいきなり8時間ぶっ通しでも研修を受け続けるのは苦痛以外のなにものでもありません。
8時間受けたとしてもほとんど身になっていません。
すべて忘れます。
そこで、スタッフのトレーニングは1週間や1ヶ月などしっかり時間をとることです。
例えば、学校の時間割のように「90分これをして10分休憩」、次はあまり頭を使わない作業を90分、10分休憩して「スキル講習を90分」というように新人が無理なくスキルやオペレーションを学べるようプログラムすると良いです。
特に、まったく違う業界から入ってきた人は勝手がわからないので飲み込みも遅いです。
当店(ECサイト運営)でも、アパレルから転職して来た子のトレーニングは3ヶ月くらいかかりました。
パソコンを持っていない子だったので、「え!?そんなことも知らないの?」連発で心折れそうになりました。
でも、教える側は、慌てず焦らず、しっかり対話を重ねて、その人のペースを探りながら教えていくのがコツです。
そもそも「何でアルバイト・パートに来ているか?」を考えると良いです。
多くを求めず温かい目で
創業社長は業務の1から10までを自分でこなしてきたので、とても器用です。
ある意味優秀です。
でも、パートやアルバイトとして働きに来る人は、社長の能力には到底及びません。
だから、起業家と同じスキルレベルを求めていては常に不満を持つことになります。
スタッフのレベルは社長の10分の1かもしれないし5割かもしれません。
もしかすると1以下かも。
その能力を見極めて、その人にとっての最高のパフォーマンスを引き出すのが社長や上司の仕事と言えます。
そして、複数のスタッフを雇う場合、やってはいけないことのひとつが別のスタッフとの能力の比較です。
「同じ時期に入ったあの子はHTMLなんてすぐマスターしたのに、お前はいつになったら使えるようになるんだ?バカか?」
「あの子は30分でできるのに、なんでお前は1時間もかかるんだ?」
など。
「あの子はできるのに、この子はなぜできないのか?」
別のスタッフとレベルを比較して、あーだこーだと言うのは「バカ経営者です。」と自分で言っているようなもの。
例え、内心はそう思ったとしても口に出したり態度に出てしまうと100%嫌われます。
経営者は嫌われたら終わりです。
一度嫌われるとスタッフの仕事に対する士気は下がり、ミスが増えたりパフォーマンスが下がったりします。
特に若い女性の場合、一度「この社長無理!」となると二度と修復できません。
嫌われてしまうと、スタッフは能力があるにもかかわらず、社長にとってはクズに向かって全力疾走します。
「こいつはバカだ。」と思っていても温かい目で育てていきましょう。
「バカゆえ、かわいい」と言い聞かせましょう。
ミスは責めずミスが発生しないような仕組みを考える
ミスをすると責める。
ミスをした側が謝る。
おそらく多くの仕事現場で毎日のように発生していることしょう。
でも、冷静に考えてみると、上司が責めたところで、ミスをした部下が謝ったところで仕事の生産性は一切上がりません。
「ミスをしたら謝るのが当然だ。」と思っている人も多いと思いますが、ミスをした時の謝罪は、謝罪される側のいらだちや不満を軽減したり解消するだけの効果しかありません。
そんなことより、なぜミスが発生したのか。
次回ミスが発生しないための方法は何かを議論するほうがよっぽど生産的です。
若干古い話ですが、ネット通販において送り状をペンで手書きしていた時代がありました。
注文内容を元ににアルバイトが手書きするわけです。
当然ミスが発生します。
「2丁目と3丁目を間違ったので商品が届かなかった。」
「住所はあっていたけどお客さんの名前が別人になってしまった。」
そんなミスはよくありました。
手書きにミスはつきものなのに、「ミスをするオマエが悪い!」なんて言うほうが頭悪いですよね。
今では、注文データをそのまま印刷できるので、そういったミスは100%発生しません。
このようにミスが発生しないように事務のオペレーションを組むのが社長であったり、担当社員の役割です。
余談になりますが、仕組みでミスを0%できたらよいのですが、そうはいかないのが人間社会。
誰もミスしないようなところでミスをする人っているんですよね。
そういったミスが多い子は、その都度教えることで良くなるって思うじゃないですか。
でも、治らない。
もはや「病気じゃないのと?」と思うくらい先天的にミスを連発する人種がたまにいます。
これには苦労しますが、それも受け入れたうえで業務オペレーションを組むのが社長の仕事でしょう。
適度な余暇を与える
例えば、1日8時間、週5日の労働のうち休憩を除く35時間(7時間×5日)すべてを仕事に集中してもらいたいところですが、仕事ばかりだとストレスもたまるし飽きてくることもあります。
大手企業では、社内にカフェがあって好きなときに他の社員と歓談できたり、託児所があっていつでも子供の顔を見に行けるといった取り組みがされていることがあります。
このような仕組みが採用されている理由は、仕事以外に息抜きができる場所や時間を作ることで社員のパフォーマンス・レベルが上がることが科学的に証明されているからです。
ただ、小さな企業になるとカフェテリアを作ったり託児所を作るのは不可能ですから、それに代わるなにかを用意します。
ある会社の例ですが、1月の勤務日から2日自由に選んでもらって、勤務時間内に2時間ほど自由行動ができる枠を作りました。
- ある社員は散歩に
- ある社員はスポーツジムに
- ある社員はお昼寝に
など 、それぞれ好きな使い方をしてもらうことで、仕事時間中にリフレッシュし改めて仕事に取り組んでもらるようになったとのことです。
「職場に行くのが楽しみ。」そんなことを言ってくれるような、働き方のできる会社を目指したいですね。
業績を反映した給料体系
「社長が儲けるためにスタッフを使う」というのは、もはや昭和時代の考え方です。
「社長が生きて行けるのはスタッフのおかげ」と、アルバイトやパートさんの幸せを考えて経営するのが、今どきの社長です。
よって、処遇面では、できるだけ業績を反映した給料体系を採用することを推奨したいと思います。
パートアルバイトが必死で働いているのに社長は高級車でゴルフにお出かけ。
旧来タイプの起業家の価値観だとは思うのですが、今は、そんなことでは社員はじめ、アルバイトやパートさん、誰もついてきてくれません。
「お金をもらいながらスキルが身につけられるのは素敵だわ~」なんて高尚な考え方ができる人はいないです。
最初はそう思っていても慣れてくるとそうは思わなくなります。
必ず金銭的な評価を求めてきます(内心)。
時給が上げられない場合はボーナスを出すなど、適宜スタッフのモチベーションを維持するよう金銭面でも配慮する必要があります。
時にはポケットマネーを出すことも必要でしょう。
スタッフは会社や社長が好きで会社に来ているわけじゃないですから。
「お給料をもらうため。 」に働きに来ているのです。
忠誠心を求めようなんて思うのも昭和スタイルです。
パートアルバイトのモチベーション維持に、適度な金銭は有効です。
信じるな!パート・アルバイトの言うことはウソ
スタッフにとって社長や上司は、「お上の人」ですから、一見打ち解けているように感じても、間には厚い壁があり、本音を言えていないことが多いと思います。
中には思ったことを率直に、あるいはズケズケ言うような人もいますが、言えない人のほうが圧倒的に多い。
ある知人の女性アルバイトさん(雑貨店勤務)の話です。
社長は「君はとてもデキる子だから来年は社員になって、もっと責任のある仕事をしてもらいたい。」と言ったそうな。
社長の中では「社員になるのは良いこと。ありがたいこと。」そして「評価してあげたので、さぞ喜ぶであろう。」と思っていたのでしょう。
ところが、実は、彼女はアルバイトのままが良くて、留学のための費用を貯めて1年後に辞めるつもりでした。
でも、「資金がたまったら辞める」ということはなかなか言えません。(ま、言えませんよね~)
「そうですか。ありがとうございます。考えておきます。」と、適当にはぐらかして、その場をやり過ごしたわけです。
「考えておきます。」という部分がウソですね。
「そうですか。ありがとうございます。」を信じた、社長にとっては計画が狂ってしまうことになります。
しっかり本音を聞ける関係を構築できていない場合、パート・アルバイトの言うことを、いちいち信じていたら大変です。
普段から、できるだけ本音を聞ける関係性を築けるようコミュニケーションを取っておくと良いと思いますし、言っていることを鵜呑みにせず、本音はどこにあるか?と考えることも大事ですね。
今思い出したけど、「母が長期入院することになったので。」と辞めたパートさん。
後から聞くと「ウソ」。
辞めた理由は「処遇に対する不満」
まあ、辞めても困らない人材だったので、ふぅ~んて感じですが、仕事を辞めるにしろ、ズル休むにしろ、みんな大ウソつきですね(^o^)
お金の奴隷!?になっているバイトちゃん
アルバイトが、上司や経営者に本音を言うことはほとんどないのではないでしょうか。
だから、上記のように表面的な言動だけを信じていると、社長は裸の王様になってしまいます。
当社の場合は、グループLINEを作っていてバイトちゃんと直接やりとりができます。
なので、いろんな意見をくれます。
ただ、評価や時給のことに関しては、なかなか言いにくいのか、こちらから話題を振ってはじめて口を開いてくれるという感じです。
2021年10月に最低賃金が底上げされました。
例えば、東京都では、それまで1,013円だったのが1,041円(28円増)になりました。
新人の時給は1,013円でしたが、評価うんぬんは関係なく、国の命令で自動的に1041円になったわけです。
そこで、すでに評価されて時給がアップしていた先輩(時給1,100円)が、「最低時給が上がったんだから、私も上がるんじゃないんですか?」と。
「最低賃金が上がったからといって全員の時給を底上げしなければいけない。」というルールはないので放置していたんですがツッコまれたという感じです。
その子は時給1,100円と評価されることより、後輩との相対的な時給の差を気にしている感じですね。
つまり、「最低時給(1,013円)の新人との自分(1,100円)の差は87円なんだから、新人が1,041になると差が59円になる。それは、おかしい。最低賃金が上がったら87円差の1,128円にすべき。」という論理。
これはアルバイト側の至極当たり前の論理ですね。
ただ、経営者としては、「最低賃金は、企業の業績の良し悪しに関係なく、国が勝手に決めたことなんで仕方なく従っただけ。あなたの時給を上げる理由はない。そもそも、業績も上がっていないのに人件費が増えるのは経営上ありえない。じゃ、もし時給を上げるとして、あなたは、28円×勤務時間分の利益を新たに作ってくれるんですか?」という論理。
まあ、経営上の数字をまったくわからないアルバイトの子に、こんなこと言っても理解も納得もしてもらえるわけもないですけどね。
で、どうしたかというと、その子は28円アップ・・・orz
と言っても、1ヶ月に100時間程度の勤務なので人件費は2800円上がるだけ。
たかが2,800円とは言え、コストアップは痛い。
全員が時給アップの話をしだすと困るので、言ってくる子だけ対処。
ただ、言わない子の一部はサイレントクレーマーのごとく、不満だけをつのらせて、最終的に辞めていくというパターンですね。
もちろん、時給を気にせず働く子もいますし、「最低賃金が上がったうんぬん」という話を難しい話だと思ってノータッチの子もいます。
ま、処遇に対する不満は、正社員であっても辞める理由の1つでもありますが。
ということを考えていると、人を使うのは非常に難しいですね。
いつ辞めても良いように業務の標準化を進める
大企業でも終身雇用は崩壊しつつあります。
スタッフも定年まで勤めることは考えていないことがほとんどです。
また、簡単に辞めやすいのがパート・アルバイトですから、いつ辞められても困らないよう業務は標準化を進めておきます。
「この子は期待できる。」なんて思ってもすぐやめる場合もあります。
期待してはいけません。
標準化とは、言い換えればマニュアル化です。
今いるスタッフが突然辞めても、様々な業務が新人でもスムーズに引き継げるようにすることです。
「その人がいないと困る(属人化)」の状況を作れば作るほど、その人が辞めたときのダメージは大きくなります。
場合によっては倒産の危機に瀕するかもしれません。
社長が直接教えないといけない仕組みにしていると、スタッフが辞めるたびに教育係という、本来社長がしなくてもよい仕事が発生してしまいます。
教育やトレーニング好きなら話は別ですが、社長は社長の仕事に専念するのが本来の姿です。
会社に嫌気がさして辞める人が、これまでやってきた業務内容を新人に引き継ぐのは嫌な仕事です。
人によっては適当にやってしまうこともあります(個人的経験)。
きっちり引き継がれなくても、マニュアルがあれば、それを元にスムーズに業務を進めることができます。
「君が辞めると困るわ~」とは言いながらも、内心では「いつ辞めてもこまらないぞ。」と言えるくらい、 業務の標準化をするのが、とても大事です。
社長のホンネ「アルバイトはしょせん・・・」
ガテン系と言いましょうか、建設現場などの業種では、「オレ、親方に付いてきます!」みたいな、忠誠心があって成り立っているような職場があります。
社長がカリスマ(俺についてこい系)になっているんですね。
でも、それ以外の一般的な会社は、そんなノリはほとんどなく、社長がいくら情熱を持っていても、アルバイトは、ただ、「給料を稼ぎに来ているだけ。」です。
かと言って、無責任に仕事をするわけではなく、ちゃんと責任を持って「仕事」はします。
でも、残念ながら「会社の運命については責任を一切放棄している。」というのがアルバイトのスタンスです。
「仕事は責任を持つけど会社の運命などは知らん。」ということです。
つまり、スタッフが休んでその日のシフトが大変になろうが、人が辞めて会社が回らないような状態になろうが、そんなことは、どーでも良いのです。
それがアルバイトです。
というか、アルバイトをする人の思考では、「スタッフが不足して会社が回らなくなる経営者の大変さ。」というのが、そもそも想像もできないし感覚もわからないので、 そこは期待しないほうが良いでしょう。
もちろん、その感覚(忠誠心など皆無)は社員も同じですが、アルバイトが違うのは「気軽に辞めれる」と言う点です(事務コストもかからない)。
時給を上げようがボーナスを出そうが「長く務める約束をするわけ」でもなく、辞めようと思えばすぐ辞めれるのがアルバイト。
そんな感覚でアルバイトを使わないと痛い目にあります。
もちろん、それは最低限「心得ておくこと」で、現場では、誠心誠意じゃないですけど、真摯にアルバイトスタッフと向きあう姿勢は必要です。
中小企業の評価制度は無意味
中小企業として社員やアルバイト、パートの評価システムを取り入れようと思っていくつか本を読んだことがありました。
ある程度の規模の企業で能力的にも近しい社員が複数人いる場合は、能力やコミット度合いなどで評価することは難しくはないと思います。
でも、中小企業で経験も能力がバラバラのパートやアルバイトを一律で評価するのは不可能です。
能力だけで評価すれば、当然経験のある人が上位にきます。
逆に、未経験の新人は一生評価されないことになります。
能力主義はいっけん良さそうですが、中小企業の現場では相性が悪いのではないかと思います。
能力だけで評価される場合、新人は永遠に評価されないわけですからそのうち不満をためて辞めていきます。
これを解決するのが、「その人の成長度合い」を評価ポイントにすることです。
少人数の中小企業では社長が全員の顔を覚えていたり仕事ぶりを把握しているような場合です。
定期的に面談をして、
社長「どこまでできるようになった?」
スタッフ「ここまでできるようになりました。」
社長「成長したね~いいね~。このレベルまで行ったら時給アップしようか。」
スタッフ「はい!ありがとうございます。」
という感じで、一人ひとりのモチベーションアップに勤める努力が中小企業の社長には求められているのではないか、って思います。
実際、そういった評価制度を稼働するとなると、かーなり大変だとは思いますが、やらない場合に比べてアルバイト・スタッフのモチベーションは維持しやすいです。