「あほダンス」ならよかったのですが、残念ながら、英語のafford(与える)という単語から来た造語(affordance/心理学者ジェームス・J・ギブソン)です。
人は、ドアノブを見れば、「回すもの」と体験的に知っています。
そのドアノブ(物や環境)から意味(回す)という意味を受け取ります。
つまり、アフォーダンスとは人や動物との関係性の認知心理学上の概念です。
わかりやすい例
アフォーダンスは建築やデザイン、またウェブデザインの中で当たり前に使われています。
ただ、普段一般の人は、そのことに気づくことは、ほとんどありません。
例えば、これ。
ウェブ上ではよく見かけますが、このボタンを見れば「クリックするところ」というのがわかります。
なので、ウェブデザイナーは、ユーザーにクリックしてもらい箇所に、わかりやすいボタンを配置します。
これがただのイラストだったら、ユーザーはクリックできるとは夢にも思わないと思います。
下記のイラストはクリックして、別のページに飛ぶ設定になっていますが、唐突にスマイルがあっても、ボタンだと思う人は、ほとんどいないでしょう。
心理学テクニックは使ってナンボ
さて、「人は変えられない。」とよく言います。
確かに、わがまなな性格な人を、次の日には、協調的で他人を優先するような性格に変えることは、ほぼ不可能です。
私も経営者の端くれですが、常々、「人を変えるのは無理。」と感じていますし、変えようなんて、もはや思ったことすらありません。
でも、わがままだろうが、頑固だろうが、アフォーダンスの概念を使った瞬間から、その人の行動を変えることはできます。
繰り返しますが、行動は変えられるんです。
例えば、この写真。
見ての通り、ただの道路です。
日本の道路なら車は左車線を進みます。
アメリカなら右ですね。
でも、この道路の写真だけだと、どこの国の道路なのか?どっち側通行なのかわかりません。
そこで活躍するのがアフォーダンスに基づいたデザイン。
それがこれ。
これで日本国内の道路ではないということがわかります。
また、この道路の現場を通る人は、やじるし通りに進むことになります。
どこにも、「矢印通り進め」とは書いていませんが、人間は無意識に矢印の通り行動をとります。
コンビニで「ここで待て」の足マークを見たことあると思いますが、あれも、人の行動をコントロールするためのアフォーダンスに基づいたデザインと言えます。
そう考えると街中至る所にアフォーダンスの概念が取り入れられていることに気づくようになると思います。
従業員をコントロールする
当社では社員やアルバイトさんが働いています。
本来、経営者としては、あれこれ指示を出したり、ミスをしたら叱ったりなどがあるでしょう。
長年経営者をやってきて思うのは、「いちいち指示を出すのもミスを叱るのもバカバカしい。やりたくない。」ということです。(もはややっていないけど。)
だから、極力仕組みを使って従業員の行動は自動でコントロールするようにしています。
もちろん、ロボットじゃないですから、すべての行動をコントロールできるはずもなく、「できる範囲」です。
例えば、よく張り紙に禁止事項や命令など書いて貼ってあったりしますよね。
「ここで飲食禁止」「私物を置くな。」「ちゃんと片付けろ。」「まっすぐ配置しろ。」
この種の張り紙は、貼った当初は目に入って従業員もルールに従いますが、日が経てば立つほど、従業員にとっては、張り紙は存在していても、背景と一体化して目にはいらなくなります。
そういった経験誰にでもあると思います。
なので当社では、張り紙はほとんどなく、「そもそもそれができないように。」「そもそもそうしなければ行けないように。」仕組みづくりをしています。
例えば、ちょうどいい高さ(ひじくらい)に棚があって、そこで飲食する人が多く、周りが汚れたりドリンクをこぼしたりして困る。」と言う場合、張り紙をしても効果がなくなるのは時間の問題です。
だから、棚を撤去してしまいます。
棚がなければ飲食物を置くことさえできませんから、わざわざ「禁止」なんて張り紙を作らなくても、100%飲食を防止することができます。
「私物を置くな。」も物理的に置けないようにしたり、「片付けろ」も片付けざるを得ない環境を作ってしまいます。
「まっすぐ配置しろ。」なんて、そんなこと書いても言ってもできる人なんか0人なんですね。
だから、補助のレールなどを使って、そこに置けば「自動的に」まっすぐになるようにするわけです。
シグニファイア
アフォーダンスは概念で、その中にシグニファイアという言葉がでてきます。
シグナルの派生語ということから気づくかもしれませんが、上記のように矢印などのシグナル(サイン)を使って、人の認識や行動を制御することです。
信号機の「青は進め、赤は止まれ。」からもわかるように、アフォーダンス概念の多くは、このシグニファイアという具体的テクニックが多く取り入れられています。