ECサイト運営者が知るべき5つの法律

EC運営者のための法律入門講座

ECサイト運営者として、世間一般の常識をわきまえるのはもちろんのこと関連する法律をある程度知っておく必要があります。

特定商取引法やその他の関連法律について、ショップ経営者視点で、専門用語をできるだけ避けてわかりやすく解説してみました。

特定商取引法

おなじみの特商法です。

この法律の本来の目的は「英会話教材などの悪質な勧誘を規制したり、トラブルを避けるための」です。

消費者の被害を防止すること。

つまり、 簡単に言えば、悪い奴らを野放しにないための法律。

勘違いしがちですが、「販売者の実名を公開したり住所公開を強制するための法律ではない」ということ。

EC事業者としては要情報を公開しておくだけで良いです。

通販にクーリングオフは無関係

特定商取引法にからんでよく出る話題が「クーリングオフ」。

ネット販売にクーリングオフは摘要されません。

例えば、お店は「返品交換不可」という規約。

でも、お客さんは、「買ってから◯◯日以内なのでクーリングオフします。」など言ってくる場合があります。

通販にクーリングオフは摘要されないのでそれを知らないお客さんには丁寧に説明してあげるのがEC運営者としての役目です。

クレーム事例

当店で実際にあった事例です。

当店では「返品交換不可」という条件付きの商品を販売しています。

それを買ったお客さんが、「サイズを間違ったので返品したい。」と申し出ました。

たしかにミスすることがあるのはわかりますが、オーダーメード的の商品なので「規約にもとづき返品はできない。」というお返事をしました。

すると、「買ってから8日以内なのでクーリングオフでお願いします。」と。

100%勘違いしているお客さんなので次のようにお返事すると良いと思います。

「クーリングオフは英会話教材やスポーツ事務など『契約』が発生する商品やサービスの場合に適用される法律です。モノのショッピングについてはクーリングオフの制度は適用できません。詳しくは消費者庁までお問い合わせください。」

これで論破じゃないですが一撃です。

景品表示法

消費者庁が所管していることからわかるように、景品表示法は消費者を守るための法律。

ECサイト運営者として守るべき点は:

(1)商品やサービスに関してウソをつかない
(2)大げさにアピールしない

という2点。

「大げさ」という言葉はあいまいなので人それぞれ認識が異なります。

すでに発生した事例などを参考にすると良いです。

ギャグ的景品法違反3事例

消費者庁が提供している景品表示法違反事例のPDFぜひ目を通しておきたいころです。

いくつかピックアップしてみます。

1つ目の事例は大学受験予備校が怒られた事例

「講師は98%が国公立大学出身」と謳ったチラシかウェブサイトの内容です。

でも、実際は14%であったため消費者からのツッコミにより消費者庁から怒られた事例です。

二流三流の大学出身者が8割ってことですかね。

さすがに、やりすぎですね。

笑うしかない。

2つ目は、焼肉屋さんが怒られた事例

「松阪牛」って書いてるんだから松阪牛が出てくるって思うじゃないですか。

ところが、期待に反しで松阪牛ではない肉を提供していたらし。

そりゃアウトだな。

分かる人にはわかりますし、このような狡いことをやってると喜んで通報したがる人もいますからね。

通報されても仕方ない浅はかな違反事例でした。

3つ目は、温泉の「やらかし」と「しくじり」

「11種類の湯めぐり」て書いてるじゃないですか。

実際は2種だったということです。

もはやウケ狙いのギャグとしか思えない景品表示法。

ここまで見ていると、むしろ「消費者に必ずツッコまれる景品法違反をやってみた。」みたいな、そんなことを楽しんでみたくなりますね。

どこの温泉かはわかりませんが、消費者庁の景品表示法違反事例レポートをご参考に。

引用元https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/160225premiums_1.pdf

消費者をだます表示がダメなだけ

この法律は、要するに、「消費者を「表示」でだましちゃダメよ」という法律です。表示内容で消費者を勘違いさせて購入させようとするのは違反というルールです。

ですから、次の二重価格もそうですが、「A社のサプリメントはまったく効きません。

当社のサプリは100%効きます」と証拠もなく書いてもいけないですし、「今回の定期の利息は10%!100万円預けたら10万円の利息!」と書いておいて、実際は税金やら手数料やを引かれて、最終的に受け取るお金は5万円、といった感じのもダメと言うわけです。

二重価格

「通常5万円の商品が、今なら2万円!」と2種類の価格を表示する、おなじみのやり方です。

法律をきっちり守るするなら、「実際に5万円で販売していたものを割引販売する」ということです。

実際に5万円で販売した実績がなければ「ウソ」の宣伝文句ということになります。

世の中、すべてのお店が、この法律をきっちり守っているかというと、そうではないですよね。

2013年に、プロ野球球団の楽天が優勝した際に、優勝セールと題して元値を釣り上げて通常価格を安く見せて販売していたお店があって楽天が謝罪したこともありました。

通常価格:3万円!
優勝セール:15,000円!

「やりすぎる」とNGですね。
(※正式には「不当景品類及び不当表示防止法」)

製造物責任法

通称PL法。「物を製造したら責任を取る必要がある」という法律です。

以前は、ある製品を使っていてケガをして、メーカーに損害賠償等を求める場合、「ケガをした人」側が「メーカーのミスを証明」する必要がありました。

でも、メーカーのミスを証明するのは非常に難しいという問題点があったけど、この法律ができたことにより「製品の欠陥」を証明すれば賠償請求ができるようになったというものです。

モノを仕入れて販売している場合は、ほとんど関係のない法律です。

ただし、洋服でも雑貨など、それを自ら作って販売しているなら関係してくる法律です。

製造者だから何かを届け出なければいけないという法律ではありません。

法律の原本
損害賠償責任を追及する場合、民法の不法行為法における一般原則によれば、 要件の一つとして加害者に故意・過失があったことにつき被害者側が証明責任を負う。 つまり民法で損害賠償を請求する際には、被告の過失を原告が立証する必要がある。 しかし多くは、過失の証明が困難であるために損害賠償を得ることが不可能になる場合があるとの問題意識から、 同法で製造者の過失を要件とせず、製造物に欠陥があったことを要件とすることにより、損害賠償責任を追及しやすくした。 このことに製造物責任の意義がある。(ウィキペディア)

wiki

著作権法

小説や音楽など、すでに販売されているものに著作権があるのはもちろん、ECサイトの写真であったり文章であったり、このブログもそうですが、販売されていないものにも著作権があります。

よって、文章も画像も無断でコピペするのはNG

以前、当店が運営するECサイトのページを丸々コピペして楽天に出店していた業者がいました。

写真から文章から、キャッチコピーまで完コピです。

今どきこんな事する人いる???」と笑っちゃいました。

田舎の老夫婦でも出店できるのが楽天なので、おそらく、ITのことも法律のこともまったく無知な運営者だったのだと思います。

お叱りメールは出したはずですが、場合によっては損害賠償を請求することもあります。

映画の世界にも音楽の世界にもパクったパクられたという話はつきものですね。

ECサイトで、他人の著作物を使う場合は、文章であれば引用を使ったり、画像であれば許可を取るなど、適切な対応が必要です。

余談ですが、当店の業界では特許製品をパクったコピー商品を作る業者が横行しています。

メーカーさんは、その都度訴えて損害賠償などを請求しています。

パクった側は、多くの場合「日本人かどうか怪しい」感じなので訴えるだけ無駄じゃね?とは思いますが、それは伝えていません。

薬機法(旧薬事法)

薬機法【やっきほう】は正確には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という長ったらしい法律です。

これは、健康食品や健康器具などを販売しているときには必須の法律と言えます。

例えば、サプリメントを販売するのに「アトピーが治ります!」とか「シミが消えます!」などと言ってはいけないというルールです。

この法律については、国がかなり厳しく監視の目を光らせていて、先日はアフィリエーターが薬機法違反で逮捕されるというニュースまで流れました。

医薬品と認定されたなら「治る」といった表現ができますが、医薬品でもないのに効果や効能を謳うと速攻レッドカードです。

サプリメントなどの健康系の商材は当たるとデカいのですが、「薬機法をいかにする抜けるか?」というところが非常に難しく、つねに知恵比べです。

当店でも、肌に関する天然系の入浴剤の商材に出会ったとき「これは!」と思って販売を始めかけたのですが、薬機法(当時は薬事法)のことを調べれば調べるほど、壁が高くなり結局販売には至りませんでした。

匿名の警告メール

よく知るECサイト運営者さん。

特許や実用新案を取得した製品を多く販売しています。

その中で特許期限が切れた商品がありました。

その事に気づかず販売を続けていたところ、匿名で「期限が切れているのに「特許」を謳うのは違法だぞ(虚偽表示)。」と指摘のメールが入ったそうです。

ECサイトは誰が見ているかわかりません。

法律に無知なまま運営してしまうと「知らない間に法律を違反していた!」なんてことになるので最低限の知識は持っておきたいものです。

でも、知っていると知らないとでは雲泥の差です。

ECサイト運営者は、広く浅く知っておけば十分です。

この記事が「きっかけ」になれば幸いです。