個人の「副業から大企業」まで。
ネットショップは「大から小までピンからキリまで」いろいろです。
でも、「注文品をお客様にお届けする」という点は、すべてのネットショップに共通の仕事です。
もっと言えば、「お客様にご注文を頂き、商品をお届けし、ご満足いただく。」というミッションも共通と言って良いでしょう。
そのようなネット通販業のミッションを遂行するため、経営者やオーナー、社員やアルバイト・スタッフは日々ネットのお仕事に奮闘するわけですが仕事内容は実に多種多様です。
今回は、業界歴20年の現役の社長が、ごく一般的なネット通販会社の裏側についてお話します。
裏側と言っても決して怪しいわけではございませんよ。
普段ネットショップは画面上に見えていても、「その裏でどのような仕事がなされているのか。」は全く見えませんから、そういう意味での裏側です。
ネットショップの仕事がキツイなんて100%ない
たまに小耳にはさむ話題が「ネットショップのバイトや社員の仕事がキツイ」ということ。
ないない・・・(笑)
ネットショップほど楽な仕事はないです。
だから、そこで働くスタッフは当然「楽」なはずです。
それにもかかわらず、「きつい」と言う人が言うなら、それは、ネットショップというビジネスは関係なくて、ただ単に、その会社の働き方や社長や上司のスタッフの使い方に問題があるということです。
20年以上ネットショップをやっていますが「キツイ」と思ったことは1回たりともありません。
そして、今いるスタッフたちも、今まで経験したどんな職種より「らく」と言っています。
もはや、他の業種には転職できないほどの極楽状態を味わっているわけです。
周りの同業者が「今月売り上げ落ちてきついわ~」と言うときの「きつい」はあっても、労働環境的に「きつい」はあり得ない話です。
それでも、業務内容がキツイと感じる場合は、社長のオペレーション(業務の手順)の組み方が絶望的に間違っているというだけです。
コピーをとったり何かを手書きしたり。
すべて間違っています。
EC関係でも特殊な仕事はきつい場合もある
ただし、特殊なネットショップで商品の重量が30kg、40kgという重量物を発送業務で担当しているなら体力的にはきついのは間違いないでしょう。
当社の取引先にも重量物の発送を担当しているお兄さんたちがいますが体力的にはキツイと思います。
これはネットショップに限らず、ですが。
世の中、いろいろなビジネスがありますが、ネット通販はパソコンをはじめとしたITを駆使して他のビジネスよりはるかに効率的なやり方を取っています。
だから、当社のスタッフでも残業は100%ありませんし、 むしろヒマぐらいの感覚です。
スタッフにしてみると、「こんなのでお金もらっても良いの?」というくらいです。
「何がキツイのか?意味がわかりません。」という状態です。
あのショッピングモールならありえるかも
ただし、例外もあります。
本来、IT技術を駆使して運営するネット通販ビジネスは体力的にとても楽なビジネスです。
すべてデジタルで処理するのでコピーだのお茶くみだの、アナログな仕事は、ほとんどありません。
また、一般的な企業のように「残業」が発生する確率は1%もないはずです。
例えば、「販売商品のひとつがテレビ番組で取り上げられ急に注文が殺到した。」なんてとき。
通常の業務では処理しきれないこともあります。
残業が必要かもしれないって思いますよね。
いいえ。
定時で帰ります。
処理しきれない分は翌日です。
だって、定時で帰れるのがネット通販の仕事の良いところですから。
当社などは、そういう約束でスタッフさんたちを雇っています。
もちろん、注文したお客さんにはすぐに届けることが出来ない場合もあります。
でも、それは注文が殺到したから仕方ない状況だから、と割り切ります。
お客さんも大事ですが、それ以前に、働いてくれているスタッフのほうが大事ですからね。
ネット通販は、いろいろありますが、某有名モールRに出店しているお店で、「忙しいわりに利益が残らない。」というお店がたくさんあります。
そんなお店は、おそらくスタッフの処遇のことは後回しになっている可能性はあります。
たまたま商品が売れているだけの会社
昔はたくさんありましたが、たまたま「商品が良いから」という理由で売れているお店です。
社長の実力というより、運がよかっただけ、というパターンです。
そういった社長は、「商品が売れていること」=「実力」と勘違いしてしまいます。
そして「俺のために働け」というスタイルで会社を回します。
社長1人が儲けるために、社員やスタッフが駒(コマ)として使われているだけの環境です。
このような会社を選ぶと、ネットショップでなくても、入ってからがきついでしょう。
今生き残っているECサイトの多くは「商品を売る」ことだけではなく、そこで働く社員やアルバイトのことも考えて、よりよい労働環境を作るよう努めています。
EC関係で、いわゆる「働き方改革」的なことに取り組んでいない会社は、よほど余裕がないか、気づいていないか、時代に遅れているか。
そんな会社は選ばないほうが良いでしょう。
入社して違和感を感じたら、その会社はおかしいです。
そもそもきつい仕事も楽しい仕事も存在しない
余談ですが、同じ仕事でも「きついと思う人」と「楽と思う人」がいるのはなぜでしょう。
これは、絶対的に「きつい仕事」や「楽な仕事」が存在しないことを意味します。
人によってとらえ方が違うということです。
つまり、「きつい」と思うか「楽」と思うかは本人次第なのです。
「きつい」と思えば、勤務中は、ストレスもたまるでしょうし就業時間も気になるでしょう。
「楽」だと思えば、ストレスはたまらないし、あっという間に終業時間になります。
もちろん、そのような思考の切り替えがうまくできるのは、ある程度経験を積まないと難しいですが。
若い人たちは、そこまで頭が回りません。
だから、楽しく働ける環境を作るのが社長の仕事になるわけです。
モチベーションを高め、ストレスなく、やりがいを持って働ける労働環境を作るのは会社側の仕事ですね。
事務スタッフは、受注、発送業務、問い合わせ対応やその他雑用が中心
さてさて、現場のお話に。
当店ではアルバイトスタッフが日々の業務にあたっています。
社内には、他の会社と同じように、パソコンやプリンター、電話やFAXなどがあります。
ちなみに、あのバカでかいコピー機はありません。
コピーは年に1回使うか使わないかです。
ネット通販では、紙は最低限しか使いません。
(A)受注業務
注文を処理することです。
受注管理画面というのがあるので、そこで注文内容やお届け先等を確認し、商品の発送のための準備を行います。
在庫を社内においていない場合は、メーカーに電話で在庫の問い合わせすることもあります。
ご注文が確定したなら、発送のために「納品書」と「送り状」をプリンターで印刷します。
納品書は、お客様の注文内容が記載された用紙です。商品に同梱(一緒に入れて)お届けします。
送り状は、運送会社用のためのものです。
送り状も、昔は手書きしていましたが今はプリンターで一括して印刷します。
手書きしていたころは、お客様の住所の記入ミスなども気づいていましたが、今は、全く見ていません。
数日後、「届かないんですけど?」など、問い合わせがあったときにミスが発覚します(めったにないけど)。
もし、そのような事が発生した場合は、お客様の注文を確認して、運送会社に電話をして、正しい住所をお伝えしてお客様に届けてもらうようにします。
この画像は、ネット販売の管理システムの一部です。通常は、このような管理システムのオペレーション(操作)が中心になります。一見難しそうですが、一通りおぼえてしまえば簡単です。
(B)発送業務
商品の発送を倉庫に外注している場合は発送業務はありません。
当店の場合は社内在庫を発送するスタイルなので、準備ができたあとスタッフがピッキング、梱包して発送業務を行います。
食器やガラス製品、また、粗悪品の発生率が高い海外輸入品を扱っているお店だと、発送前に、「欠けていないか?」「こわれていないか?」など「検品作業」を行う場合もあります。
当店の場合は、すでに検品済みの商品を販売しているので検品なしで発送します。
余談ですが、ピッキングとは倉庫の棚などから注文品をとってくることです。
大きな倉庫の場合は、ピッキング専門スタッフなどもいますが、最近はロボット化される流れがあるので、この仕事は将来的になくなりそうです。
(C)問い合わせ対応
注文だけだと非常に楽なんですが「お問い合わせ」というのもたくさんあります。
よく頂く問い合わせなどは、Q&Aという形でサイト上に表示していますが、全く見ていないお客様も多くその都度回答しなければいけません。
ネット通販だけにメールの問い合わせが多いですが電話も少なくはないです。
商品の問い合わせに対応するには商品知識、配送関係の問い合わせには配送関係の知識、卸販売に関する問い合わせには、その会社の卸販売の仕組みの理解などが必要になりますが、これはどこの会社でも同じように「研修」で一通り学びます。
わからないことや、イレギュラーことがあって「どうすればいいの!?」となった場合は、経験も知識も豊富な上司や社長に聞きます。
(D)その他の事務
顧客が一般の個人のお客様以外に、法人(会社)やその他の団体などがいる場合、見積書や請求書の作成といった仕事も発生します。
最近は、どこの企業もネットを普通に使っていて、「見積書や請求書はPDFで良い」というところも増えてきましたが、そうでない企業もまだまだあります。
「見積書をFAXしてくれ」とか「領収書を送ってくれ」といったアナログな企業も多いので、その対応に追われることもあります。
官公庁(学校や役所)などは、もっとアナログ度合いが凶悪で、何でも紙・・紙・・、しかも、「書類を手書きしないといけない」なんてこともあります。
その他には、経理や総務のような仕事も発生することがあります。そこは企業によって、専門部署があったり外注していたりと様々です。
ウェブ担当のお仕事
お客様が閲覧し操作するネットショップ見えている部分の編集を行います。
専門性が高く、ウェブ担当のスタッフが受注業務や問い合わせ対応にあたることはありません。
でも、お店によっては兼任という場合もあります(器用な人はありがたい)。
(A)ページ作り
みなさんが普段見ている商品ページですが、1分でできたページもあれば1週間や2週間、あるいは1ヶ月近くかかるものまで様々です。
1分でできるページは、例えば、商品写真1、2枚と価格、簡単な説明があるだけのシンプルなページです。
逆に1週間、2週間とかかるページは、縦に長いページで、写真や文字数もたくさん使われています。
専門用語でランディングページと言います。
これだけ長いページとなると、まずはどんなページにするかという「企画」からスタートして、どのような組み立てにするかという「設計」、そしてどのような写真やイラストを使うかについて「アイデア」を出し、写真を「撮影」したり、最終的に「制作」という形に持っていきます。
大きな企業の場合は、「企画」や「設計」、「制作」などにそれぞれ専任スタッフが着いていることがありますが、当店は一人でやります。撮影も一眼レフを使って、なんちゃってプロ風の写真にします。
(B)サイトの改善
「ページは一度作ったらおしまい。」なら楽で良いのですが、「できるだけたくさんの人に来てもらって、できるだけたくさん売りたい!」というのがお店の本音です。
新しくページを作るのとは別に、既存のページをより良く改善していく作業があります。
具体的には、新しいページが完成したときは「いい出来だ!」と満足したものも、時間が経つと、「商品の見せ方いまいちじゃない?写真イケてないよね・・・」「このキャッチコピーべたすぎだわ」「この説明わざとらしくね?」など、良くない点を見つけては改善していきます。
このように1ページを作る作るのにも「制作」というスキルの部分と、商品写真やイラスト、キャッチコピーや説明文について、お客さんにとって良いか悪いかといった判断ができる能力も必要になります。
広告担当のお仕事
今は、ほとんどのネットショップが広告を出します。
どのような内容の広告を出すか。
「予算はどれくらいか。」といったことを計画して実行するのが広告担当のお仕事です。
もっともポピュラーな広告は、みなさんも目にしたことがある検索広告です。
この画像はフェイクですが、広告担当は広告タイトルや広告説明文を考え、広告ツールを使って広告を出します。 広
予算も大事で、100万円販売するのに100万円はかけられませんから、ちゃんとお店に利益が残るよう、日々広告を調整していきます。
また、このような広告の先には商品ページがありますから、ウェブ担当と広告担当はよく打ち合わせをします。
例えば、「広告内容とページの内容をきっちり合わせる」という部分は非常に大切で、最も頭を使うところです。
なお、ネットショップの仕事の中でも、この広告を扱う部分は、アルバイトスタッフでは難しいので、当店の場合は社長が、企業の場合は自社内の広告担当部署、あるいは、外注(そとの会社に発注)するなどします。
ブログでも書いているのですが、今も、今後も不足しているのが広告運用担当者の仕事です。
この仕事だけできれば、ネットショップどころか、どんな職種でもやっていけます。
当店も、今必要としているのは広告をちゃんと運用できる人材です。
コロナの影響で、多くの職種で求人がなくなり、解雇も発生していますが、広告運用は、コロナだろうが、インフルエンザだろうが、広告運用ができる人材は最強です。
デジプロなどで広告の基礎を学び、ある程度実践を積んだ人材は引く手あまたです。
これは100%保証します。
広告運用のプロが、びっくりするほど不足しています。
梱包発送とか、問い合わせ対等とか、そんなのできる人は掃いて捨てるほどいますから。
IT化やAIが進化するこの時代、「誰でもできる仕事」は消滅の運命にあります。
EC業界は、人より「よりできる」スキルを身につけている人しか活躍できない業界になりつつあります。
仕入れ担当のお仕事
仕入れ担当は、俗に「バイヤー」とも言います。
大手セレクトショップ、東急ハンズやロフト、百貨店などにはバイヤー専任がいますが、小さなネットショップの場合は社長がやっていることが大半ではないでしょうか。
当店の場合も、仕入れも製品の開発も、社長である私が担当しています。
海外へ買い付けにいくお店もあれば、国内仕入れのお店もあります。
当店は原則国内仕入れ、たまに輸入(海外仕入れ)。
「仕入先の担当者を接待する」といったことはありませんが、一緒にご飯に行ったり飲みに行くことはたまにあります。
これらに社員やアルバイトスタッフがかかわることはありません。
最後に
4つの分野のお仕事に分けて紹介してみました。
もちろん、これがすべてではありません。
小さなネットショップの実情です。
大手企業になると「問い合わせ応対」だけに特化した部署があることも珍しくありません。
でも、ほとんどのネットショップは中小企業や個人です。
あまり多くのネットショップを知っているわけではありませんが、「年に1度は自社製品を買わなければいけない。」とか「仕事中は私語一切禁止。」「飲食禁止」とか。
会社によってはワケのわからんルールがあることもあります。
最近、社員として働く若い女性から聞いたのは、社長から「オレはオマエが嫌いだ。」と言われたそうです。
まあ~なんてお気の毒なことか。そんな事言われたら、やる気完全に失せますよね。
というか「雇っている社員に対して言うか?」って思いますけどね。
仕事がきついのではなく、多くの場合、人間関係が「きつい」と感じていることのほうが多いのではないでしょか。
話は戻りますが、ネットショップでは、多岐に渡る仕事を少人数で分担してやっていたり、あるいは1人で全部兼業してやっていることもあります。
もし、あなたがネット販売の会社で働きたい場合は、その会社の社員数を見れば、一人あたりの仕事の種類がだいたい分かるかも知れませんね。
例えば、2~3人規模だと、一人で何役も兼任することになる可能性が高いです。
逆に大手企業などで、「ウェブクリエーター募集」とあれば、ほぼウェブの仕事になるでしょう。
「これだけやりたい」と思っても、他の仕事もこなさなければいけないこともあるので面接などでじっくり聞くと良いと思います。