仕入れや卸販売の現場でよく使われる専門用語があります。
どこの業界も似たようなものだとは思いますが、私の経験した業界をもとに、「これくらい知っておけば、仕入れや卸販売のとき、なんとかなるんじゃね?」と頻出専門用語をピックアップして解説します。
同じ言葉でも、業界が変われば意味やニュアンスが変わることもある点はご注意下さい。
何千語も英単語おぼえないとけない受験などに比べれば屁のような少なさです。
ここで紹介する、たった十数個をおぼえるだけで、あなたもすぐに業界人です!?
取引先と自信をもって対等にしゃべれるようになります。
上代【じょうだい】
この言葉を初めて聞いたとき「何それ?」と聞き返したのを思い出します。
一般の消費者として生活している限り「上代」という言葉を使うことは少ないでしょう。
上代とは、簡単に言えば「定価」のことです。いわゆる「メーカー小売希望価格」や「実際の小売り売価」の業界用語です。
例えば、現金問屋などに足を運び、「この商品の定価はいくらですか?」と聞けば、 「一般のお客さんかな?」と思われますが、「これ上代はいくら?」と聞くだけで、 すぐに業界人と思われるのです。
業界度合いの濃い言葉のひとつと言えるでしょう。
ちなみに、輸入商品などで定価が決まっていない場合(オープン価格)などは、 輸入元の商社が参考としての定価を提示する「参考上代」と言ったり、 「プロパー(proper/正規の、定価)」と言ったりすることもわかります。
下代【げだい】
上代があれば下代もあります。下代とは卸値、仕入れ価格という意味です。でも、この言葉は、あまり定義がはっきりしてなくて、管理人の業界では「メーカーが問屋に卸す価格のことを下代」と言っていますし、かつていた業界では、販売店仕入れ価格のことを下代と言っていました。
その他、「卸単価」、単に「単価」、「仕切り」などと言うこともあります。特に、「仕切り」という言葉は、メーカーが問屋に卸す場合によく使われるようです。いずれにせよ、「卸値」には間違いないので、関わっている業界の慣習に従えば良いでしょう。
掛け率【かけりつ】
「この商品の仕入れ値はいくらですか?」というより、「この商品のかけ率は?」なんて言うほうが一般的です。掛け率とは、販売価格に対する仕入れ価格の割合です。6掛けと言えば、定価10000円の商品なら6000円が仕入れ価格ということを意味します。
問屋の場合、複数のメーカー品を扱っていることが多く、メーカーによって掛率が異なる場合があります。「A社の商品の掛率は6掛けだけど、B社は7掛け」といった感じです。掛率は割合を示すのですが、掛率が75%の時は、正確には掛率「七割五分」ですが、「掛率は75」とパーセンテージと混同してしまいます。
注残【ちゅうざん】
納期が遅れている注文のことです。例えば、メーカーに発注した際、メーカーが在庫切れを起こし商品を出荷できず、後日納品することになる注文分(予約、保留)のこと。正確には受注残と言います。
具体的には、メーカーに100個発注をかけた際、70個は在庫があったのですぐに送ってもらいましたが、残り30個は後日入荷次第納品です。この時の「残り30個分」が注残です。バックオーダーと言うこともあります。
発注単位【はっちゅうたんい】
仕入れをする場合、卸値で買いつけますが、多くの場合注文の最低単位が決められていることが一般的です。「発注単位は3ケースからでお願いします。」「発注は10万円以上でお願いします。」など、注文するときの単位のことです。
「発注単位」は「注文する際の最低ラインのことですから、英語で「ミニマム(minimum/最小の量)」と言うこともあります。また、よく似た言葉に「ロット(lot/組、単位)」という言葉があります。「1入/lot」と書いていれば、1つの箱に商品が2個入っていて、それが最低発注単位だったりします。
元払い【もとばらい】
元払とは、発送人が送料を負担して荷物を送ることを意味します。送料着払いの反意語です。送ってもらう側の立場で言い換えると「送料無料」です。
問屋やメーカーに直接商品を取りに行けば、配送運賃はかかりませんが、仕入れ先が遠方の場合、送ってもらうのが一般的です。そうすると、ネットショップでの販売と同じように、「送料は誰が負担するか?」という問題が出てきます。
そこで、例えば、「10万円以上の発注の場合は送料元払い。」などの条件があれば、10万円未満の仕入れは別途送料を払わないといけません。でも、10万円以上仕入れるなら、送料は問屋やメーカーなどの卸元が負担してくれるということになります。
赤伝【あかでん】
辞書にも載っていない言葉です。まさに仕入れ現場で使う専門用語と言えます。仕入れをすると必ず伝票が付いてきます。納品書であったり仕入れ伝票であったり。そこには、取引先名やコード、仕入れ価格から納品数量、合計金額などが記載されていたりします。
例えば、商品Aを5000円で仕入れた。このとき、仕入れ伝票などには「5000円」と記載されます。ところが、商品Aが破損していたので仕入先に返品しました。すると今度は、『「-5000円」を納品した』という意味の仕入れ伝票がきます。返品したので、プラマイゼロにしているわけです。このマイナスを意味する伝票のことを赤伝と言います。
この赤伝が登場するのは、継続的に仕入を行っているときで、「これから仕入れをする」と言う場合に、いきなり赤伝の話がでることはありません。また、取引のデータを電子的に行っている場合、いちいち赤伝を起こすなんてことはやってないこともあります。
発注書【はっちゅうしょ】
注文書のことです。インターネット、メールがこれだけ普及しているのに、どういうわけか、「注文の受け付けはFAXのみ」という、時代について来れていないの企業もまだまだあります。
仕入れ先指定の発注用紙を使わないといけない場合もあれば、自由な形式で注文を出せる場合もあります。またメールや電話で注文を受ける企業もあります。
口座【こうざ】
銀行口座のことではないです。
取引口座のことです。
メーカーや問屋などと取引できることになった場合、「口座を開設するので○○を用意してください。」などと言われることがあります。
「取引先としてデータを登録する」ことを「口座を開設する」と言ったりします。
逆を言えば「口座を開設しますので。」と言われたら、「取引しても良いよ。」と言うことを意味します。審査パス!
「口座を開設する」は、言い換えると「取引契約をする」と言えます。
したがって、場合によっては、「住民票を出して欲しい。」「保証人を用意してほしい」などの要求もあるかもしれません。
口座が開設できれば、次からは、会社名だけで「ツケ」として商品を仕入れることができます。
掛け【かけ】
掛け率というときの掛けは割合のことですが、「カケで買う」という言い方をすることがあります。
これは、ツケに似ていて、先に商品を頂いて後で支払いをする方法です。
後払いと言えますが、企業間取引の場合1ヶ月の間に何度も仕入れをすることがあります。
その都度支払いをしていたのでは、振込手数料もバカになりません。
1ヶ月の仕入れを月末で締【し】めて、まとめて、その翌月に支払ったりします。
これが掛けで仕入れをするということです。簿記の関連用語に、売掛金、買掛金という科目がありますが、同じ意味です。
買い取り【かいとり】
買い取りとは、文字通り、仕入先から商品を買い取ることを言います。
じゃ、買い取らない仕入れ方法もあるのか?
もちろん、買い取らずに、商品をお借りして売れた商品の仕入れだ金を後で支払う「委託販売」や「消化仕入れ」という方式もあります。
それと区別するための言葉でしょう。
客注【きゃくちゅう】
客注とは、文字通り客の注文のことです。注文するのは客ですから、当たり前なのですが、仕入れの現場では特別な意味を持ちます。
例えば、お客として入ったお店での会話。
- あなた「このTシャツ(品番A)ください。」
- 店員「もーしわけありません。在庫切れです。お取り寄せされますか?」
- あなた「はい。お願いします。」
- 店員「少々お待ち下さい」
- 店員→仕入先に「(品番A)を客注で大至急お願いします。」
- 仕入先「了解いたしました。」
と言う感じで、通常の売り先が決まっていない注文とは別に、「購入が決まっている注文」のことを客注というわけです。仕入先としても、「売れることがわかっている」客注は、優先して在庫を確保してくれたり、優先的に出荷してくれたりなど、配慮してくれることになります。
取引【とりひき】
例えば、問屋から仕入れることが決まることを「取引」が決まる。と言います。新規に取引を開始すると言います。契約や審査、あるいは、保証金を入れることで取引が始まるケースもあります。
仕入れたい場合は、「仕入れさせて欲しい。」というよりは、「取引お願いできますか。」と言うほうが自然です。
先入れ先出し【さきいれさきだし】
賞味期限のある食品の場合によく行われます。
スーパーの牛乳コーナーでは奥のほうに製造日が新しいもの(賞味期限が長いもの)が配置されるのは知っていると思います。
要するに「先に仕入れた商品を先に出そうぜ。」というのが先入れ先出しです。
当社では飲食業も展開してますが、仕入れた食材について「アキニ(兄貴/先に仕入れた商品)から使ってね!」なんて、ここでも業界用語が使われます。
委託販売【いたくはんばい】
委託とは業務を他人に依頼することです。
つまり、自分の商品を自分では売らず他人におまかせする場合に使われる言葉ですが、もっと狭い意味で使われます。
それは「商品をお貸しして、売れたらその手数料を払う。」といったビジネスモデルのことです。
例えば、「ハンドメイド・アクセサリーを作るAさんが、自分の商品を知り合いのアパレルショップに置いてもらう。販売するのはアパレルショップ。そこで、もし、売れたら、代金のうち10%をアパレルショップに払う。」といった感じです。
このとき、アパレルショップはAをさんの雑貨を「仕入れて代金を支払済み」ではなく、「ただで借りて置いている。」というのがポイントです。
買い取り【かいとり】
「貴金属買取ります。」というときの買い取りの意味とは若干違います。
商品を仕入れる際に、「商品を代金を支払って自社の在庫として向かい入れる」というのが買い取りです。
仕入れを「買い取りにするか、委託にするか」そんな選択がある仕入れ方法もあります。
当社のネットの物販部門は、基本買い取り仕入れです。
商品が売れて在庫が減ってきたら、メーカーに発注して商品を買い取って仕入れます。
もし、売れ残ったとしても、それは買い取った側(当社)の責任なので、メーカーに「なんとかしてよ~」と泣きつくことはできません。