「ネットショップの開業費用はどれくらい?」という素朴な疑問。
通販サイト運営歴20年のECコンサルタントによる回答。
まず、ネットショップと一言に言っても「副業で個人で開業」というパターンから「中小企業の通販事業」、また「飲食店のネット通販開始」など、さまざまなパターンがあります。
開業資金は2つに分けて考える
飲食店の開業といえば、店舗取得費用、店内造作物、什器などの設備、人件費等、おきまりのコストがあります。
「15坪家賃15万円の店舗を借りる。」となったら、そこから契約費用や造作、設備などトータルの開業費用を見積もること簡単です。
しかし、「ネットショップ開業となると1万点の商品を売りたい。」といった大規模な場合でも、base(ベイス)やyahoo! shoppingを使えば通販システムの初期費用は0円で済みます。
ネット販売は飲食店のように店舗スペースという限られたキャパの考えはありません。
商品と言ってもすべてデジタルデータなので、販売サイトには、ほぼ無限に掲載することができます。
そこで重要となるのが「通販システム費用」と「運営のための費用」の2つに分ける考え方です。
通販システム自体は「費用」と言うには、あまりに安いコストです。
2000年以後のネット通販ブーム、さらに今回のコロナ騒ぎのでの通販ブームでも、システム代は、ほぼ変化ありません。
コストが上がってきているのは運営のための費用です。
具体的には、人材やマーケティング費用です。
それ以外はたいした費用はかかりません。
もちろん、人やマーケティングにお金をかけたからと言って良い結果が得られるとは限りません。
ネット通販運営に必要な機材やシステムの費用
ネット通販を運営する機材やシステムは、運営方法によって違ってきます。
「自社在庫、かつ自社で商品を撮影して発送も行う。」という場合に必要な機材やシステムを紹介します。
パソコン
パソコンを持っていなくてスマホだけでネットショップをやっている人もたくさんいます。
それはそれでも良いのですが、パソコンと小さな画面のスマホとでは作業効率が桁違いに違います。
「趣味でネットショップ。」という場合にはスマホでも良いですが、最大限の利益を取る!」というような場合はパソコンは必須でしょう。
それも、できるだけ最新スペックの高速なパソコンを利用することでスピーディーなネット通販の運用ができ時間的コストも下げることができます。
費用の目安としては15万円~30万円程度です。
「何を選んで良いかわからない!」って場合は下記のパソコンを選んでおけば間違いありません。
プリンター
ネット通販運営上、プリンターで印刷するのは以下の3点。
- 納品書
- 送り状
- 販促物
納品書は法的に「入れなければいけない。」と決まっているものではないので、最近は納品書を入れず、客側でPDFを印刷する手法が広がりつつあります。
販促物については、別のページでも触れていますがリピーター対策の大事なツールです。
プリンターの費用は1万円~。
プリンターには「インクジェット・プリンター」と「レーザープリンター」と2種類あり、インクジェットは省スペースだけど印刷スピードが遅くレーザーはデカいけど印刷スピードは早いという特徴があります。
レーザープリンターのほうが費用はかかりますが、大量印刷の場合やスピードを重視する場合はレーザープリンターがおすすめです。
カメラ
最近のiPhoneのカメラが高性能なのはご存知のとおりです。
なので、特に写真にこだわりがなけれればiPhoneのカメラで十分です。
費用は10万円前後。
でも、「アパレルショップを立ち上げる。」あるいは「食品販売。」という場合、スマホよりも一眼レフを使ったほうが、よりプロ寄りの写真が撮れるので検討すべきでしょう。
食品販売の場合は接写が多くなるので「一眼レフ」+「単焦点レンズ」の組み合わせならパーフェクトです。
一眼レフを買う場合、費用は8万~25万程度です。
初心者でも扱いやすいEOS KISSは一眼レフの定番になっていますね。
画像や動画の編集ソフト
ネットショップで商品を販売する場合、商品写真の上にイラストや文字を載せます。
そうすることでクリックしてもらいやすいという効果があります。
写真だけで売れるに越したことはありませんが、ほとんどのお店では「いかにクリックしてもらうか?」に苦心しているので写真の編集は必須と言えます。
ただ、「費用がかかるか?」というと嬉しいことに0円でも可能です。
当店でも使っている、オンラインサービスのcanva(キャンバ)を使えば、ブラウザ上で写真の高度な編集ができてしまいます。
例えばこれ。
イスだけの写真に文字やイラストを入れてみました。
画像編集ソフトといえば、アドビ社の「イラストレーター」や「フォトショップ」などがありますが、ソフトそのものを使いこなすためのスキルが必要になるので、人材コストも上がってしまいます。
canva(キャンバ)ならパソコンが使えれば誰でもできる簡単なオンライアプリです。
電話(固定電話・携帯電話・IP電話)
ネットショップを立ち上げると、特定商取引法にもとづき電話番号を含む運営者情報を公開する必要があります。
ケータイ電話でも固定電話でも050で始まる電話番号でも構いません。
ただ、「電話番号を表記するのは義務」ですが「出るかでないかは自由」です。
ネット販売を20年以上やってきて電話を受けるコストは電話代以上に無視できないほど大きいです。
例えば、当社ではアルバイトスタッフが電話対応にあたってくれていますが、「送料はいくら?」「いつとどく?」「返品はできる?」など、販売サイトに書いていることを念を押すかののように、ひたすら質問するような人もいるわけです。
対応した10なり15分なりは完全に無駄な費用となってしまいます。
今からネット通販を立ち上げるなら電話については、しっかり計画を作ったほうが良いと思います。
1番のオススメはIIJmio(みおふぉん)などのスマホアプリ電話(050番)。
初期費用や月額費用は0円で、かけた分だけ(30秒8.8円)で受ける分は固定電話やケータイ電話と同様無料です。
固定電話を導入する場合はAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)がおすすめです。
固定電話をNTTやネット回線業者を通じて取得すると月額で1,000円2,000円と費用がかかってきます。
でもAWSだと月額費用ゼロ円で固定電話が取得できます。(要:個人確認資料の提出)
FAX
終焉を迎えつつある文明の力FAX。
FAXといえばFAX機なんて思っている人は相当時代遅れですよ!(^^)
今はFAXはメールで送受信です。
Interfaxや≪eFax≫と使えばFAXマシーンなしでFAXの送受信ができます。
紙は不要。
まるで紙を受信したかのような画像をパソコン画面で見ることができます。
当店も10年以上前から取り入れていてIT化が送れている取引先企業とのやり取りに使っています。
InterFAXは月額1,000円ほどの費用がかかりますが≪eFax≫は基本無料で従量制です。
どちらも使っていますが≪eFax≫は若干不安定なことがあるのでInterFAXを使っていれば安牌だと思います。
会計ソフト
飲食店や企業がネット通販を立ち上げる場合は、すでに会計ソフトなどは導入済みだと思いますが。新規でネットショップを開業する場合は会計ソフトも必須になります。
ソフトと言ってもパソコンソフトはいらなくて、オンラインで記帳できるフリー(freee)などの導入が一般的になっています。
「クラウド会計ソフト」というジャンルになりますが費用は月額1,000円程度からです。
クラウド会計の超絶に便利なのは、銀行やクレジットカード会社と連動でき、入手金や支払いなどのお金の出入りを自動で取り込むことができる点です。
当店でも以前は「経理担当」がいましたが辞めて、今は通販サイト運営スタッフが片手間でクラウド会計を操作しています。
会計の素人でも直感的にかんたんに操作できるのがクラウド会計の特徴でもあります。
業種別ネット通販運営にかかる費用
業種によって開業や運営にかかる費用は違ってきます。
新規で惣菜や焼き菓子などのネット販売を始める場合は、各種許可が必要になります。
食品販売に必要な費用
そうざい製造業なら21,000円。菓子製業なら14,000円。など許可取得のための費用がしれていますが、許可を取るための設備に費用がかかります。
中古品買い取りや販売
中古品の買い取りや販売は、警察管轄の古物商許可証の費用が19,000円ほどかかります。
酒類
酒類を小売する場合は、酒類販売免許(登録免許税30,000円)の費用がかかりますが、素人が免許の申請をするのは難しく、通常は司法書士や行政書士に代行してもらいます。
その場合、費用はトータルで15万円前後を見ておく必要があります。
化粧品の販売
化粧品を製造販売する場合は「化粧品製造販売許可」。
製造しなくても海外からブランド化粧品などを輸入して販売する場合も「化粧品製造販売許可」は必要になってきます。
国内のパッケージ化された化粧品を小売する場合は特に許可や認可は不要です。
通販サイト開設パターン4種類とその費用
通販サイトを持つには「通販システム」を使います。
通販システムには5種類あり、それぞれ費用がことなります。
一般的な通販開業システム
副業人や飲食店、中小企業が定番的に使うのが「通販開業システム」。
ASP(エー・エス・ピー)やSaaS(サース)と言われるサービスです。
月額0円~で手軽に利用できるので、よほどでない限り、この手のサービスを利用しておくのが無難です。
最近は、Shopifyが月額3,000円程度で利用でき高機能なので利用者が急増しています。
ショッピングモール
ヤフーショッピングや楽天、アマゾンなどがショッピングモールと言われるECシステムです。
ヤフーは月額の費用は無料ですが、楽天は月額費用5万円~、アマゾンは出店料こそ月額3,000円ほどですが販売手数料が10%~とかかってきます。
その代わり、特に宣伝などしなくても売れやすいのがショッピングモールの特徴と言えます。
通販システム無料ソフト
通販システムの無料パッケージがネット上で配られています。
専門用語では「オープンソース」と言います。
オープンソースを使えば、月額300円くらいからの費用で通販サイトが立ち上げ可能です。
ただし、こちらはbase(ベイス)のようなネット通販ビギナー向けではなくネット通販上級者向けのやり方です。
つかいこなす知識やスキルがあることが前提です。
1からシステム開発
通販サイトのシステムを1から開発していく方法もあります。
専門用語では「フルスクラッチ」と言います。
楽天などに出展していた企業がモールに頼らず自社サイトを立ち上げるようなときに使うのがフルスクラッチです。
ワークマンやサウンドハウスなどが、モールを退店してフルスクラッチの通販システムを開発しています。
フルスクラッチは費用も300万500万1000万と高額になることがほとんどで、個人や中小企業がいきなりフルスクラッチということはありません。
(1)個人副業でネットショップ開業
個人の副業でネットショップを開業する場合の初期費用は0円~。
通販システムは無料のものから楽天のように月に数万円もかかるシステムまでいろいろです。
どこを選んでも、通販システムは「ツール」にすぎないので、ツール次第で売れるとか売れないは決まりません。
ただし、楽天やヤフーショッピング、アマゾンのような「強力な集客力」のあるサイトに出店した場合は、それ以外で開店するよりも売れやすい傾向があります。
いずれにせよ、通販開業システムはbase(ベイス)のように月額無料で高めの販売手数料(売上毎に6.6%+40円)だけのシステムから、高くて月額2、3万程度のシステムが大半をしめます。
なので開業費用は仕入れ代くらいのものです。
ただし「納品書を自分で印刷したい。」なんて場合はプリンターが必要なので1、2万円の費用はかかります。
また、「プロ並みのグラフィカルなデザインを取り入れたい。」なんて場合は、アドビのイラストレーターなどのパソコンソフトの費用なども見ておく必要があるでしょう。(ま、そんな人はいないと思いますが!)
個人でネットショップを開業する場合は(1)メールアドレス(2)クレジットカード(3)銀行口座(4)通販開業システム。
この4店セットで気楽に始められます。
もちろん、売れるか売れないかは「腕」次第です。
(2)飲食店のネット通販開始のための費用
ころな騒ぎで飲食店がダメージを受け、それをきっかけに通販を始めた飲食店も多くありました。
しかし、スムーズにできる飲食店は、時間があったり人材がいたりなど、恵まれた環境にあると言えます。
でも、多くの飲食店のオーナー兼料理人なは忙しく、仕事終わりは疲れて新しいことに取り組む体力も残っていません。
そういった状況下でネット販売を始めるためには「人」が必要になります。
副業ネットショップをやる人は、そもそも「その時間」があるから始めるからであって、時間のない人は始められません。
飲食店のネット通販でも「自分でできない。」場合は「人」にやってもらう必要があります。
社員やアルバイトでITが得意な人がいれば、シフト時間外に時間をとって取り組んでもらう方法が1つ。
それが難しい場合は、外部から通販サイトの立ち上げを指揮できる人材を迎え入れる必要があります。
費用は、通販サイトの規模にもよりますが10万~といった費用になります。
(3)中小企業のネット通販立ち上げ
「副業でネットショップを始めた。売れなかった。やーめた。」
副業でネットショップを始める人の多くがたどる道です。
しかしながら、中小企業のネット通販参入ともなれば、「ちょっとやってみたけどダメだった。やーめた。」というアホな選択をすることは少なく、綿密な計画と予算配分をし、中長期的な戦略で立ち上げを行います。
上記で説明したとおり、通販開業システム自体は安価です。
中小企業の通販立ち上げでもっとも費用がかかるのは人です。
人というリソースと資金をマネジメントしながら進めないと行けないのが中小企業の通販の立ち上げ方法です。
飲食店の通販ショップ開店の場合、既存客がいるので商品は売れやすいです。
特に広告宣伝をしなくてもよく売れるケースもあります。
しかしながら、中小企業の通販事業の立ち上げは、販売商品の知名度があれば、販売に苦労することはありませんが、知名度のない商品はマーケティング施策からのスタートです。
そのため、「人」の費用に加えて「マーケティング」「広告」の費用がかかってきます。
その額は、取扱商品や人のスキルレベルにより、まちまちなので一概には言えません。
年商10億の中小企業の事例
年商10億の中小企業がネット通販を立ち上げるときにかかった費用の例です。
社内人材にITにわかる者がいないため外部人材に立ち上げから運営までをアウトソーシングした例です。
打ち合わせで、ネットショップオープンまでの計画を立てます。
期間は1ヶ月。
商品写真や商品データを用意してもらってコンサル側で販売サイトを作り上げます。
販売サイトの運営は「自社でやる」とのことだったので、商品の登録方法や受注処理の方法などのトレーニング。
ここまでが1つのパッケージで約80万円。
「立ち上げまで」なのでかなり価なほうだとは思いますが、継続的にコンサルを受ける場合は月額5万、10万という費用がかかってきます。
それくらいの費用をペイできる商材があればよいのですが、ありふれた商材の場合は費用はドブの中に捨てることになります。
なので、そもそもネット通販を立ち上げる前の市場調査の段階で、「立ち上げるべきなのか否か。」をしっかり検討すべきでしょう。
ちなみに年商10億の中小企業は、ネットショップは完成こそしましたが、結局、兼業で販売サイト運営をできるほどの人間がいなく、3、4年後に通販サイトは閉鎖になりました。
繰り返しますが、中小企業の場合は、システムの費用よりも「人」と「マーケティング」に費用がかかります。
そこを知らない中小企業は、だいたい通販サイトを作っておしまい。
観賞用ウェブサイトで終っています。
経営者がどこまで認識しているか、によります。